男女共同参画社会を取り巻く現状と課題 ~H市の男女共同参画状況の事例から~

~男女共同参画社会の実現に向けての日本の動き~

 男女共同参画社会の実現に向けて、昭和50年「男女雇用機会均等法」の施行や昭和54年「女子差別撤廃条約」の国連憲章の批准等様々な取組がなされてきた。平成11年には、新しい社会の構築の出発点でもある「男女共同参画社会基本法」が制定され、男女共同参画社会の実現は21世紀の社会を決定する最重要課題として位置づけられている。

 また、少子高齢化の急速な進行や労働力の不足等社会情勢の変化に伴う新たな課題が生じる中、平成28年には、女性が職場で能力を発揮し活躍できる社会を実現するため、「女性活躍推進法」が施行され、平成30年には、衆議院、参議院および地方議会の選挙において、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目ざすこと等を基本原則とした「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が施行された。

 国の「第5次男女共同参画基本計画」では、新しい目標として「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取組を進める」とされ「誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会」となることが目指されている。

 しかし、政策・方針決定過程への女性の参画、性別による固定的な役割分担意識や慣習、配偶者への暴力や各種ハラスメント、ワーク・ライフ・バランスの実現等、今なお多くの課題が残されており、さらには、令和2年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、特に女性比率の高い非正規雇用労働者への雇用の悪化が深刻な影響を及ぼしている。

 

~H市の女性の政策・方針決定機関への参画状況の現状~

 H市の審議会等の女性委員の比率については、平成28年から令和2年にかけて30%に達しておらず、国や県に比べるとかなり低い割合となっている。 一方、国や県において女性の審議会委員の比率は平成28年から令和2年にかけて上昇傾向を示しており、令和2年では、国では40.7%、県では40.9%と4割を超えている。  

資料:厚生労働省「人口動態調査」、滋賀県「人口動態調査」、H市統計書

 

 

~H市の「男女共同参画社会づくりのための市民・企業意識調査」からの現状と課題~

 H市において令和元年度に実施した「男女共同参画社会づくりのための市民・企業意識調査」からは、家庭・地域・教育の場、就労の場における男女共同参画や、女性へのあらゆる暴力防止や多様な性への理解等について様々な課題があげられている。 以下に、各調査において浮かびあがってきた課題と、求められる取組を例示する。  

♦市民意識調査♦

男女の地位の平等について、家庭や職場、社会通念や習慣・しきたり、政治の場、社会全体等様々な場で、男女の格差が残っている状況を改善するため、固定的な性別役割分担意識の解消に努めることが求められる。

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♦企業意識調査♦  

管理職になる女性が2割に達していない状況であることや、非正規従業者の女性の割合が男性よりも大幅に高くなっている状況について、働く女性の職場環境や雇用条件の改善を始め、女性の管理職への登用を推進する必要がある。

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~H市の男女共同参画社会の実現に向けて~

 上述の課題を受けて、H市の計画では、「①家庭・地域・教育の場での男女共同参画」、「②働く場での男女共同参画」と、「③尊重し認めあう男女共同参画」について3つの基本目標を定め、世界各国が共に取り組むべき国際目標SDGsの達成に向け、ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」をはじめ、各種ゴールに関連づけた基本施策が設定された。

 H市では、特に「市の審議会等における女性委員の割合が低い」ことや、「女性の管理監督職が少ない」等の課題について、クオータ制※の導入の推進や、女性人材バンクの活用等の充実、積極的な女性登用の推進等の施策に取り組むこととし、成果指標「市の審議会等における女性委員の割合」について、令和2年(基準値)25.8%を、令和15年(目標値)40.0%にまで引き上げることを目指している。

 

~SDGsゴール5(ジェンダーの平等)の推進に向けて~

 SDGs5(ジェンダーの平等)の実現を判断するための一つの指標として、ジェンダーギャップ指数※が用いられているが、令和3年3月に公表された日本のジェンダーギャップ指数は、156か国中120位(前年153か国中121位)と、世界の国々の状況と比較して低い水準にとどまっている。その理由としては、政治分野において女性の国会議員等が少ないことや、経済分野において管理職になる女性が少ないこと等が大きく影響している。

 また、国の「第5次男女共同参画基本計画」では、「2020年までに指導的地位※に占める女性の割合を30%にする」と目標を掲げているが、数値目標を示しても達成できてこなかったという現状がある。

 H市においても議論されたクオータ制は、女性議員の比率を引き上げる有効な手段として注目されており、130以上の国や政党レベルで各種クオータ制が導入されて選挙が執行されているが、現在のところ日本においては導入されていない。世界的に見て日本の女性議員の比率は極めて低い状況である。クオータ制を導入することで、政治分野において女性議員の割合が増えること等から日本のジェンダーギャップ指数の改善につながり、世界水準に近づくと考えられる。

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※クオータ制:議員や会社役員等の女性の割合を、あらかじめ一定数に定めて積極的に起用する制度

※ジェンダーギャップ指数:世界経済フォーラムが男女格差の指標として「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野で指数を調べ、2006年から公表している。ジェンダーギャップ

指数は、男性の数を「1」とした場合、女性の数はどのくらいなのかを表している。

※指導的地位:①議会議員、②法人・団体等における課長相当職以上の者、③専門的・技術的な職業のうち特に専門性が高い職業に従事する者